開催日:2025年8月26日(火)
参加者:4名

今回の勉強会では、2025年2月に岩手県大船渡市で発生した山林火災を題材に、気候変動と山火事の関係について学びました。
地球温暖化の影響が、まさか山林火災の発生リスクにもつながっているとは…。改めて気候変動の広がりと深刻さを実感させられる内容でした。

背景

近年、世界各地で山林火災が激化し、焼失面積・発生頻度・被害規模がいずれも過去最大を更新しています。これまで比較的、湿潤とされていた日本の地域でも、2025年2月の岩手県大船渡市の大規模火災のように、例外ではない状況が現れ始めています。その背景には、気候変動に伴う異常気象(高温・乾燥・強風)が複雑に絡み合い、従来の自然災害リスク評価が通用しなくなりつつある。

気候変動が山火事リスクを高めるメカニズム

高温化による可燃性の上昇

・地球温暖化により森林の含水率が低下
・草木や落ち葉が乾燥しやすくなり、火がつきやすくなる
・燃料化した植物が延焼を加速させるリスク

乾燥化・極端気象の頻発

・気候変動により乾季が長期化、降水パターンが偏在
・山林が慢性的に乾燥状態となり発火しやすい
・小さな火種(落雷・野焼き等)でも大火災に発展しやすい

風力・突風の強化による延焼リスク増大

・温暖化が突風、フェーン現象の強度と頻度を増加させる
・火災時の延焼スピードが増大
・気象条件によっては、防災対応が追いつかない状況も発生

岩手県大船渡市山火事

2025年2月26日、岩手県大船渡市で大規模な山林火災が発生しました。
約979世帯に避難指示を発令し、焼失面積は約2900ヘクタール。2月の降水量は2.5㎜と平年より93.9%減という少雨の状況だった。20日連続で乾燥注意報が発令されており、風速も強く火の拡大を助長したと推測。多くの住宅が被害を受けた深刻な災害となった。
この火災は、地球温暖化に伴う気候変動がもたらす乾燥化と異常気象の影響を示す事例として、カーボンニュートラル推進の重要性を再認識させるものとなっている。

山火事の負の連鎖

地球温暖化と山林火災は「負の連鎖」を引き起こす。
山林は通常、火災後に自然回復するが、近年は回復する前に再び火災が起き、森林が元に戻らないケースが増えている。
その結果、森林の劣化が進み、CO₂の大気中への放出も増加。過去20年で、火災による森林消失は大幅に増えている。

経済的損失と予防策

・山火事の消火や避難、復旧には莫大な費用がかかる
・公的資金だけでなく、地域経済や住民生活にも大きな影響を与える

➡火災後の対応だけでなく、森林が燃えにくい環境を作る「予防的な投資」が重要になる。
将来の気候リスクを金銭的に評価し、被害を防ぐ為二酸化炭素排出に価格をつけるカーボンプライシングや山火事対策などの防災投資として実施されている。

カーボンプライシングとは(主に2つある)

CO₂の排出に価格を付けることで、企業や個人に排出量に応じた負担を課す政策手法
(課税かどうかではなくCO₂を出すことにコストがかかるようにすること)

種類方法インセンティブ/影響
炭素税(※)排出するCO₂の量に応じて税金を課す・排出者は排出量に比例した税金を払うため、排出削減のインセンティブが生まれる
排出量取引制度排出枠(キャップ)を設け枠内で企業間に排出権を売買させる・枠内でCO2排出(間接的コスト)
・枠を超えて排出(直接的コスト)

※化石燃料の輸入者や製造業者が納税するが、実際にはガソリン・電気・ガスなどの価格に上乗せされ最終的には消費者(私たち)が負担する仕組みになっている

また、2023年にスタートしたGX-ETS(排出量取引制度)が2025年5月にGX推進法の改正が成立し、2026年から一定規模以上の企業(年間CO₂排出量10万t以上)に対し段階的に義務化される予定。

感想

温暖化が進むと、夏は暑さが厳しく雨は降らず、降る時は局所的で激しいといった異常気象がここ数年続いています。今回の勉強会を通じて、CO₂削減の必要性を改めて実感しました。近年の異常気象の被害を考えると、一刻も早く取り組む必要があると強く感じました。


カーボンニュートラルの推進は重要で、根本的な解決をしないといけないけれど、今まさに起きている災害を解決する手段も同時に考えなければ、山火事は再び各地で発生し、乾燥もすぐに和らぐわけではないので、人々が安心して暮らせる場所が減ってしまうと思いました。森林業界で働く方々の苦労も大きいだろうと感じます。


今回の勉強会で、山火事に対してこれまであまり関心を持っていなかった自分に気づきました。しかし実際には、地球温暖化による気候変動と深く繋がっていることを知り、「こんなところにまで影響が…」と驚きました。鎮火してよかったね、で済ませるのではなく、もっと根本的な課題にしっかり目を向けていく必要があると感じました。


山火事のニュースを見て、「近代技術でも消すことはできないのか?」と漠然と見ていましたが、今回の勉強会で地球温暖化が影響していると知り、これは問題だと分かりました。自然環境を守ってきた森が機能を果たさなくなってきているということは、環境悪化が進むということ。。。いろいろな面に関わってくるのだと学びました。

参考にしたサイト

ウェザーニューズ
https://weathernews.jp/news/202503/120225/
ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/大船渡市山林火災
脱炭素ソリューションサービス
https://www.eneres.jp/journal/carbon_tax/
空飛ぶ捜索医療団
https://arrows.peace-winds.org/journal/15875/
経済産業省
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/emissions_trading/pdf/001_03_00.pdf

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